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Volunteer’s Report 022「フォスターアカデミー オンラインセミナー第11回を拝見しました」

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photo by 半沢 健

「フォスターアカデミー オンラインセミナー第11回を拝見しました」

八巻 千鶴子

 
今回、当日参加できませんでしたが、後日視聴させて頂きました。
コロナ禍での開催方法として生まれたオンラインセミナーは、オンタイムで参加できない人にも、追って受講することができるので、とてもいいものだと実感させて頂きました。
※ 動画をご覧になる方は、下記URLをクリックください。
https://youtu.be/98ztyxvbJAM
前半が犬にまつわるお仕事のプロの目線からみた保護活動について、そして後半は、各地方にいらっしゃる保護団体の方々のお話を聞くことができました。
まず、前半のペット業界で働いているプロの方々のお話をお伝えします。
 

  • ドッグトレーナー 株式会社jp代表取締役 今村 真也さんのお話

今村さんは普段、はっぴーているず保護roomでの保護活動や、犬の保育園、犬のマナー啓発等の活動をされていらっしゃいます。
次々と拾った犬と共にすごした幼少期を経て、東日本大震災の被災犬を保護するシェルター運営を機に、犬の保護活動を始めたとのことでした。
たくさんの犬と接する機会が多い今村さんが、犬と接する時に普段から気を付けていることは、「この犬はこうだ!」と決めつけないことだそうです。
今村さんは、以前と比べて保護犬という言葉や、犬を飼う時に保護犬を迎えるという選択肢が増えたとは思うけれど、まだまだ、保護活動の形を改善すべきことがあると感じているそうです。
コロナ禍の中、今までの保護活動だけではなく、オンラインを上手く利用したりして、それぞれが自分の得意なことと保護活動を組み合わせてやっていけたらいいと思います、と話を結ばれました。
 

  • ドッグサロン経営者 株式会社D09代表取締役 森部 暢章さんのお話

森部さんは、二十歳になって初めて犬を飼った時に、犬にまつわる仕事につきたいと決心したそうです。
その当時は病院と美容の二択しか思い浮かばず、「きれいにしてあげたい」方を選んでトリマーの道へ進んだそうです。
森部さん曰く、犬にまつわるお仕事でご飯を食べさせて頂いているので、ご恩返しをしていきたいと考え、保護活動を始められたとのことでした。
保護活動の拠点がトリミングサロンというおかげで、譲渡対象の保護犬が人目につくのが、大きなメリットのひとつだと思うと、指摘されました。
コロナ禍の中、保護犬を預かることができなくても、保護活動をしている人を応援したり、自分が知り得た話を友達にするだけでも、十分手助けになると思うので、自分が無理なくできることをすればいいと思うと、笑顔で話してくれました。
 
後半は、日本各地で活動する動物保護団体の代表の方、3名の方々のお話を聞くことができました。
 

  • ドッグレスキュー熊本 代表 生松 義浩さんのお話

熊本県にある全面芝生のドッグランカフェにある広場を、譲渡会会場として貸したのが保護活動にふれたのが最初だそうです。
その後、生松さんは保健所で殺処分の子犬三匹を保護したのをきっかけに、保護活動をしていこうと、生松さんは決心したそうです。
熊本地震で被災した犬も預かったそうですが、この7月にやっと全ての犬を飼い主さんへお返しすることができたとのことでした。
今年はなぜか、コロナ禍にもかかわらず、犬を飼いたいという人がたくさん訪れ、譲渡が難しいと言われる成犬も含めた約40頭が、新しいご家族とのご縁ができたそうです。
生松さんから、被災者としての経験をふまえて、事前に被災者支援セットのようなものが準備されていれば、送る側も受け取る側もスムーズにいくのではないかとご提案されていました。
また、ペット可の避難場所をいくつか設定して頂ければ、被災時に混乱がなく済むのではないかともご指摘がありました。
全国各地から頂く支援物資はありがたいのに、その仕分け作業は、膨大な時間と人手を必要とするので、緊急対応が必要なのに歯がゆい思いをするそうです。
事前に色々なことが準備されていれば、もっと素早い対応ができると、生松さんは強い願いを込めて語られました。
 

  • NPO法人アニマルサポート高知家 代表 吉本 由美さんのお話

吉本さんは保護犬に助けられたことがきっかけで、高知県で保護活動をはじめて、まだ1年だそうです。高知県に愛護センターが無い中、頑張っている保護団体だそうです。
譲渡会もものすごく盛況で、県下の保護団体が参加し、獣医師やトレーナーの無料相談や、個人で猫を拾って困っている方など、さまざまな人の力を借りて楽しいイベントとなるよう努力しているそうです。
多頭飼育崩壊の方の保護活動も、獣医師等のプロの方の手を借りて対応する中で、吉本さんは、犬猫を助けるということは、その飼い主も助けるということだと感じたそうです。
また、里親さんと保護主の関係だったお子さん同士が中心となり、肉球軍団と称し啓蒙活動をしたりと、保護活動の会を発足して1年とは思えないほどの充実した活動ぶりを、楽しそうに説明して下さいました。
吉本さんは、保護活動はできる人ができる時にできることをやろうと考えており、まずは「やってみいや」という感じだと、土佐弁でにこやかに締めくくられてました。
 

  • 公益財団法人動物臨床医学研究所 理事(所長) 高島 一昭先生のお話

鳥取県にある財団(略して)動臨研は40周年の歴史があり、高島先生はその理事であり、動物病院院長や獣医師会役員、大学の非常勤講師をされているそうです。
財団では、2013年に「人と動物の未来センター・アミティエ」を発足し、元牛舎を改造し、保護活動を始めたとのことでした。
保護動物を受け入れ全頭検査を行い、不妊去勢手術・迷子防止のマイクロチップを入れ、譲渡へ向けての準備をしているそうです。
アミティエでは、譲渡制度の中に3時間の講習会を受けることもシステムに組み込まれており、飼い主さんへの情報供給にもしっかり対応されているとのことでした。
アミティエの保護動物は、獣医師が母体となって活動しているので、高いレベルでの健康管理がされ、里親が見つかるまで、ずっと待ち続けて下さるそうです。
動物病院のスタッフがメインで活動している場所なので、飼い主さんにも色々な方がいて、動物について無知だったために悔しい思いをしたことがあると、高島先生はお話をして下さいました。
アミティエの譲渡条件が厳しいのは、譲渡したあとの保護動物のことを、真剣に考えた上で、いい飼い主さんをみつけてあげたいという思いがある、と熱く語られました。
犬猫だけが幸せになるのではなく、飼い主さんが幸せでなければ、動物たちも幸せにはなれないと思うと、高島先生は真剣な眼差しで語って下さいました。
 
今回は、ペット業界でお仕事をされるプロの方から主婦の方まで、さまざまな視点を持つ方のお話を聞くことができました。
参加者が聞きたいと思う質問が、フォスターアカデミー事務局の松原さんから繰り出され、講師の方の考えをさらに掘り下げて聞くことができ、良い時間を過ごすことができました。
個人的には、今村さんの仰っていた「犬はひろうもの」という言葉に、自分の子供の頃を思い出しました。当時は野良犬を町で見かけることは、珍しくもなんともない時代でした。
あれから数十年が経ち、今では「保護活動」という言葉が根付くようになりました。
歩みは遅いのかもしれませんが、明らかに時代と共に、動物の大切さに気付く人が増えている気がします。
もうひとつ印象深かったのが、講師のみなさんが、動物が好きだという想いがあふれる笑顔でお話をされていたことです。
東京、熊本、高知、鳥取と離れた場所にいても、想いはひとつ。
動物にも幸せになって欲しい、という心の声が聞こえてきそうなオンラインセミナー第11回でした。