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Volunteer’s Report 007 アニマル・ウェルフェア サミット2017に参加してきました

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photo by 半沢 健

クリステル・ヴィ・アンサンブルの活動を支えてくださっているボランティアのお一人である 八巻 千鶴子さんからさんから寄せられたレポートをご紹介します。
 

「トークショー~アニマル・ウェルフェアへの想い~」

 八巻 千鶴子

去る8月27日、東京大学弥生講堂にて開催された「トークショー~アニマル・ウェルフェアへの想い~」に参加致しました。
登壇者は3名。
編集者 松原賢さん
一般財団法人 クリステル・ヴィ・アンサンブル代表理事 滝川クリステルさん
スペシャルゲスト 株式会社ほぼ日代表取締役「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰 糸井重里さん
そして、MC 渋谷亜希さんの進行で始まりました。
午後3時からの開始にもかかわらず、まだまだ元気な参加者が耳を傾ける中、登壇者の方の活動を始めたきっかけや、殺処分ゼロを目指すことのジレンマについての話、老犬にとっての幸せや、動物医療のお話まで、今身近にある問題点を私達にうまく提示しながら、トークショーは進んでいきました。
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MCの渋谷さんから、動物と過ごしてきて気付いた「アニマル・ウェルフェア」とは何か、という問いかけがありました。
アニマル・ウェルフェアとは、もともとは畜産動物がより良い肉を、より良いミルクを作るためにはどのようにしたらよいのか、という家畜の福祉基準として掲げられましたが、現在では、ペット、家畜、水族館などの動物たちなど、人間の管理下にある動物を対象とし、その管理をしている動物たちの環境をいかに整えるかということだそうです。
そして、人間の管理下ではない野生動物は、その対象ではないとのことでした。
その説明に、私は思わず「へえ」と声をだしてしまいました。
朝から、いくつかのプログラムを聴講してきたにもかかわらず、やっとアニマル・ウェルフェアの定義というものを知ったからです。
アニマル・ウェルフェアの基準として国際的に認められているものが、イギリスで提唱された「5つの自由」だそうです。
サミットのパンフレットにありましたので、引用致しますと……
5つの自由

  • 飢え、渇きからの自由 (給餌・給水の確保)
  • 不快からの自由 (適切な飼育環境の供給)
  • 痛み・負傷・病気からの自由 (予防・診断・治療の適用)
  • 本来の行動がとれる自由 (適切な空間、刺激、仲間の存在)
  • 恐怖・抑圧からの自由 (適切な取扱い)

守られて当然の権利のように思えますが、守られない場合が多いからこそ、このような基準が設けられたのかと思うと、同じ命あるものとして恥ずかしく思いました。
 
そして、松原さんが面白いことを教えて下さいました。
動物のことを「癒しの存在」と言ったりしますが、アニマル・ウェルフェアの満たされた環境下にいる動物を見ると、私達は癒されると感じ、恐怖におびえていたり、痛みを感じていたり、のどが渇いていたり、そういう動物を見たとしたら、私達は癒されないそうです。
私達がアニマル・ウェルフェアを満たしてあげることで、動物たちはそれ以上のものを返してくれるということを覚えておいて欲しい、と松原さんは話を結びました。
 
糸井さんは、好きな言葉があると教えてくれました。
「いつでも清潔な水を与えて下さい」
身近な動物の飼育本でよくみかけるこの言葉には、「5つの自由」の全ての要素が入っていると仰いました。
面倒をみる人がいなければ、動物たちはそのままで生きていくことはできません。
この言葉が示すように、ほんの一杯の「清潔な」「水」を、「いつでも」動物たちに「与えることができている」のだろうかと、常に自分に問いかけていくことが大切だと思っている、と糸井さんは分かりやすく表現をされたのです。
とても簡潔な表現ですが、たくさんの言葉を重ねて説明するよりも、私達の心の奥に響いてくる一言でした。
本当に当たり前のことなのですが、動物たちも同じ心と命を持っていることを忘れずに、と言われている気がしました。
 
滝川さんは、アニマル・ウェルフェアとは、動物をどうやって思いやっていくのか、自分の心に問いかける作業だと考えていると話されました。
アニマル・ウェルフェアの「対象」は、人間の管理下にある動物のことです。
なので、動物自身の問題というよりも、「人としての心の在り方」のほうが問題だととらえて、自分には一体何ができるだろうかと、一生懸命考えていくことが大切だと皆さんに提案するように話されていました。
 
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――動物のことを思いやって大切にすること
 
気付けば、登壇者の皆さんが同じ事ことを、形を変えてお話されていました。
アニマル・ウェルフェアとは、決して難しい事ではなく、人が人を思いやるのと同じように、動物のことを思いやってあげること。
一つの命を持つもの同士として、共に生きるために動物を思いやる。
そうすれば、動物たちはきっと、共に生きる命の温かさときらめきを幸せに変え、私達にそっと返してくれるのではないかと思いました。