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Volunteer’s Report 009 フォスターアカデミー セミナー第23回に参加しました

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photo by 半沢 健

2月10日。
青山学院アスタジオにて、フォスターアカデミー セミナー第23回が開催されました。今回のテーマは「みんなが出来る地域猫活動」ということで、NPO法人ねりまねこ理事長の亀山知弘さん、副理事長の亀山嘉代さんをお迎えしての講義となりました。

お名前から分かる通りお二人は共働きのご夫婦で、練馬区にて地域猫ボランティアとして活動し始めて八年目ということでした。ボランティアへの道へ入ったのは、カラスの犠牲になりそうだった子猫が、空から降ってきたのを助けようとしたのがきっかけだったそうです。子猫は九日間生きて亡くなったそうです。嘉代さんは自分の手の中で生き物が死んでいくという経験に、初めて死をリアルなものと感じ、外にいる猫たちに興味を持ち始めたとのことでした。
そこから地域猫の抱える問題に衝撃を受け、動物愛護やボランティア活動に全く興味の無かったお二人が、地域猫ボランティアとなるまでを話してくれました。
手探りで始めたボランティア。
今のお二人のご様子からは全く想像できませんが、はじめは怖かったそうです。ご夫婦だけで町の野良猫に対峙するには、あまりにも戦力不足。手探りでも何もないよりは後ろ盾があると明示した方がいいだろうということで、「練馬区地域猫推進ボランティア」として行政に登録し、町内会や町の有志を巻き込みながら、野良猫問題をみんなで解決していく。自分達だけで問題を抱え込むのではなく、たくさんの人の知恵を借りながら解決する。そういう活動の道を選んだそうです。
野良猫問題は糞尿がくさいとか、子猫がうまれてどんどん野良猫が増えていくとか、マナーの悪いエサやりさんが後片付けをしないことによって、その場所が不衛生になっていくなどが主なものです。
その問題を減らしていくために次のようなことをするそうです。
 

  • 野良猫に不妊去勢手術を施す

TNR(Trap・Neuter・Return)をする。
トラップ=野良猫を捕まえて、ニューター=不妊去勢手術を施して、リターン=元の場所に戻す
その際、手術済みの目印として片方の耳の先が、ほんの少しV字にカットされます。

  • エサやり

各自治体のルールに則って、地域住民の理解を得られた場所で、決められた時間にエサやりを行い、終了後清掃を行う。

  • 猫トイレ・猫ハウスの設置

住民の理解を得られた場所で、猫たちのトイレ場所、猫の休める場所を設置する。
 
このように地域猫活動とは、もともと野良猫だった猫たちを、地域のボランティアさんや住民の方のご協力をもとに、エサをあげたり不妊去勢手術を施して管理していくことだそうです。
どれも住民の方の理解を得るためには、地道な努力が必要となるものばかりです。
お二人の講義のスライドから引用しますと……
 
飼い主のいない猫の問題を、「地域の環境問題」として
住民・ボランティア・行政が協力し、飼い主のいない猫を適正に管理し、
暮らしやすいまちづくりをめざす活動
 
と分かりやすくまとめられていました。
お恥ずかしながら地域猫活動と保護猫活動の区別がついていなかった私は、野良猫の問題を「地域の環境問題」と定義して、行政の協力を得る活動方法もあるということを今回知りました。
どこを目標にして活動するかはそれぞれの考え方次第ですが、ねりまねこさんの「野良猫ゼロ」ではなく「猫トラブルゼロ」を目標に、人と猫とが共生できるまちづくりを目指すという考えた方はとても分かりやすく、猫が苦手な方にとっても説明しやすいように思えました。
個人の得手不得手は変えようがないものなので、野良猫問題に白黒をつけるよりも、うまい着地点を見つけてお互い譲り合って生活していけるほうが、人にとっても猫にとってもより良い環境が生まれ、どちらにとっても住みやすい町になるような気がしました。
 
講義の後にワークショップも開催されました。

野良猫トラブルを解決するにはどうするかというお題に対して、グループごとに意見を出し合い最後に発表をするというものでした。
知らない参加者同士が自己紹介をしながらトラブル解決方法を考えていく様子は、まさに講義で聞いたコミュニティが協力をしていく姿そのもので、どのグループも白熱していました。
 
お二人の話を聞いていて、ふと頭に浮かんだ言葉が「よろず猫相談事承ります」でした。野良猫を助けたくてもどうしたらいいのか分からない、と考える方もたくさんいらっしゃると思います。そんな悩みを小耳に挟んだら、亀山夫妻はお二人揃って「こんな方法があるよ」とか、「こうしてみるといいよ」と気さくに教えていただけそうな気がしました。
一人で問題を抱えるのではなく、みんなで問題を共有して解決していく。
決して無理な保護はしない。
一番大切なのは、自分のできる範囲で自分が楽しく続けられる活動をすればいい。
そう繰り返し話して下さるお二人にヒントをもらって、自分にできることは何だろう? と立ち止まって考える人が、今回の講義によってまた増えていくような予感がしました。
 八巻 千鶴子
次回のフォスターアカデミー セミナーについては、下記ページをご覧ください。
http://www.fosternet.org/