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食物連鎖が起こす、思わぬ二次災害

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photo by 半沢 健

動物たちのことを考えるにあたっては、保護したい動物だけでなく、その動物たちが何を食べ、どんな地域に住んでいるかといった、周辺の環境のことも視野に入れる必要があります。
皆さんは、オオワシやオジロワシといった、北海道に住んでいる猛禽類をご存知でしょうか。国の天然記念物に指定され、見た目は逞しい大きな鳥達ですが、実は希少野生動物種にも指定されています。
▼ オオワシ
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野生のオオワシは、世界中でオホーツク海周辺のみ5,000〜6,000羽が生息しています。ロシアで繁殖し、1,500羽ほどが日本で越冬します。
▼ オジロワシ
オジロワシ後ろ姿
オジロワシは、越冬期にロシアから渡来する冬鳥と、日本で繁殖する留鳥の両方が生息し、国内では約150ペアが繁殖しているそうです。
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こういった猛禽類は肉食で、魚や小動物を狩り、大型動物の死骸を見つけ、食事にしています。たとえ希少動物には配慮しているつもりでも、彼らを取り巻く環境に気を配らなければ、間接的な被害が発生することになり、それは今現在も頻発しています。
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当財団のアドバイザーでもある、齊藤慶輔さんが代表を務める猛禽類医学研究所(IRBJ)のFacebookページでは、人間の安易な行動が引き起こす、大まかに2種類の猛禽類への被害が紹介されています。
◆ 放置された礫死体に近づくことで起きる衝突事故
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1つ目は猛禽類の列車などへの衝突事故です。これは単に偶発的なものではなく、鹿など他の動物の礫死体に集まってきた猛禽類が撥ねられてしまう事故です。
線路や道路上の礫死体は、管理者によって撤去されますが、なんらかの理由で撤去が遅れた場合は、死骸に寄ってきた猛禽類が車両と接触してしまうようです。
◆ 鉛を用いた猟銃弾による鉛中毒
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2つ目は鉛中毒による猛禽類の被害です。これは、猛禽類が撃たれたのではなく、鉛でできた銃弾の破片や、鉛に汚染された動物を食べた猛禽類が鉛中毒になってしまう被害です。狩猟によって出た死骸の放置や、鉛を含んだ銃弾の使用は法的にも禁止された行為です。
北海道はエゾシカ猟が盛んで、各地から様々なハンターがやってきます。鉛弾の使用が2000年に規制されたにも関わらず、現在もルールを守らないハンターが後を絶ちません。
鉛の弾を打ち込んで汚染した死骸を放置することは、国の天然記念物を含む、周辺地区の生態系全体に悪影響を与えます。
 
鉛中毒死したオオワシとオジロワシ
今回ご紹介した被害は、あくまで、ごく一部のものです。
自分の興味を持った動物だけでなく、自然のサイクルを視野に入れながら、動物たちと一緒に生きる世界について考えていきましょう。
*本文中の写真は猛禽類医学研究所の齊藤慶輔さんから頂きました。
関連リンク
猛禽類医学研究所Facebook
猛禽類医学研究所
北海道「ワシ類の鉛中毒について」
WEB GOETHE 滝川クリステル いま、一番気になる仕事 Vol.51