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Volunteer’s Report 023 フォスターアカデミー ライブ配信レポート

去る2月13日に、アイペット損害保険株式会社の協賛により、フォスターアカデミー ライブ配信が行われました。テーマは「青森の猫を救うために、できることからはじめてみませんか」。

講師の田辺アンニイさんをはじめ、青森県動物愛護センターの職員さんや地元の保護団体の方々のお話を伺いながら、刺激的な2時間を過ごしました。

申込者124名、同時視聴者89名、動画再生回数は271回を記録しました。
(現在は動画をご視聴いただくことができません。ご了承ください)

今回はその模様をご報告したいと思います。

 

◆開会のご挨拶 アイペット損害保険株式会社の上野歩美さん

上野さんより、今回「何故、青森県だったのか」についてご説明がありました。

同社は青森県内に、会社にとって重要な機能である事務センターや営業所を配し、青森動物愛護センターでの新入社員研修や、ボランティア活動、イベントへの参加をされてきたそうです。

昨年、そのご縁で動物愛護に関する協定を青森県と締結し、その中に「一時預かりボランティアの認知拡大支援」という項目があり、クリステル財団に協力を依頼しオンラインライブ配信を行うことになったとのことでした。

上野さんも、妊娠中でも保護・譲渡の活動を続けるほど活動をされており、今回の配信で1頭でも多くの動物たちを幸せにしていければいいと、ご自身の想いを語られていました。

 

◆青森県内の猫の現状について 青森県動物愛護センター主幹 山田忠正さん

山田さんより、青森県の現状についてご説明がありました。

センターは2006年に設置され、県内5カ所に駐在職員をおいており、飼い主や来館者に対し、動物の正しい飼い方の指導や、犬猫の引き取り頭数および、殺処分頭数の減少に取り組んでいるとのことでした。

センターでは事故で負傷した猫や、病気で動けなくなった猫を対象に保護をしていますが、その中で、昨年度致死処分となった猫は666匹。その3/4は子猫だったとのことです。

地元ボランティアと協力し、TNRや地域猫の促進をしているそうですが、ミルクボランティア(200g以下の子猫が対象)と育成ボランティア(450g以上の子猫が対象)の協力者を増やしていきたいそうです。

現在は、猫の多頭飼育崩壊が増えてきているので、何とか未然に防ぐ手立てを考えているとのことでした。

 

◆「猫の預かり、はじめませんか」 講師:田辺アンニイさん 『ノラ猫あがりのスターたち』著者、幸せの703号室管理人

約20年前。

アンニイさんは一人暮らしをはじめたのをきっかけに、1頭の犬を飼い始めたそうです。

犬の情報を得るために大量の本を読み漁り、「捨て犬をすくう街(渡辺眞子著)」という本を読んだ時、年間65万頭もの犬が殺処分されていることを初めて知り、驚いて寝込んだそうです。

それが、動物保護活動への第一歩だったと話されていました。

最初は、後方支援や行政に対しての署名活動から始め、河川敷でホームレスに飼われている元捨て犬たちの保護に奔走したそうです。

そうしているうちに、野良猫や捨て猫に遭遇する機会が増え、猫も保護対象になっていったとのことでした。

また、身近によくある猫の例をあげながら、保護したあとの流れを説明して下さいました。

まず協力病院での健康診断をしてもらい、必要であれば不妊去勢手術、血液検査、ノミ・ダニのチェック、ワクチンを打つなど処置を済ませ、可愛い顔の写真を撮りネットで新しい飼い主探しを始めるそうです。

アンニイさんは、成猫でも子猫でも「保護することができれば新しい飼い主が見つけられる」と考え、猫達の新しい人生はいくつになってからでも探すことができると述べられました。

 

「ゼロよりイチ」

 

全ての猫を救えないと何もしないで嘆くよりも、たとえ1匹でも命をひとつ生かすことができたと考える。

今すぐ世界が変わらなくても、いつか変わると自分を励まし、時には自分を許し甘やかす言葉として、アンニイさんはこの言葉を大切にしているとのことでした。

過ぎた自己犠牲で辛くなっては元も子もないので、ライフスタイルの一環として、保護活動を無理なく続けることが大切ですと、アンニイさんは語りました。

アンニイさんが保護活動を始めた20年前とは違って、今では保護箱をもって歩けば、「保護ですか?」と話しかけてくるほど、一般の人へ動物保護の知識が浸透し、応援してくれる人が増えてきたのを肌で感じるようになったそうです。

世間では「殺処分ゼロ」という言葉が広まっていますが、アンニイさんは、ロードキルや多頭飼育崩壊、不適正飼養などを減らした結果、殺処分がゼロになるという形が理想ですと力強く語り、今後も、「ゼロよりイチ」を目指して、保護活動を続けていくと話を結ばれました。

http://anny703.com/

 

青森県の現状のお話を伺いながら、アンニイさんの個人からでもアプローチできる保護活動についてお話を聞いた後は、実際に青森で活動されている各ボランティアさんのお話聞くことができました。

◆しっぽの願い@青森 代表 小池真知子さん

三沢市で猫のTNR活動をしている団体です。

その中で子猫、成猫のボランティア、ごみ清掃、広報活動やイベントスタッフのお手伝いなどのボランティアを募集しているとのことでした。

会員としてボランティアを募集しているのではなく、時間が空いている時にお手伝いをして頂ける方を広く募集しているそうです。気軽にお問合せ頂ければ嬉しいですとのことでした。

https://shippononegai.wixsite.com/shippononegai

 

◆動物愛護の会八戸 学生部 島あさひさん・江指七海さん(共に北里大生)

2002年に設立し、青森県初の犬猫の定期譲渡会を開催した団体です。

設立当初、青森県内に譲渡会を開催した場所はなく、会場を借りるために200軒以上たずねて、唯一お話を聞いて下さったのが、現在も開場となっているピアドゥさんだそうです。

団体への相談内容として、多頭飼育崩壊、死亡・入院等で飼育困難になっているケースなど、飼い主がいるのに困っているケースが多いとのことでした。

多頭飼育崩壊の現場へ家庭訪問し正確な情報を確認し、必要であれば家族やケアマネ―ジャーに相談した上で、保護をしていくこともあるそうです。

青森の外猫飼いの方が「猫が増えて困る」と相談があるそうですが、「自身の責任で飼っている」という考えが薄く、飼い主自身に自覚を持ってもらうことが大事だと考えているとのことでした。

飼い主へTNRの知識などを伝え、意識を変えて頂くことが必要と感じているそうです。

現在、一時預かりや看取り専門のボランティア、譲渡会のお手伝い、譲渡希望者対応、家庭訪問などを募集していますが、特にTNRのできる方を募集されているとのことでした。

http://www.inuneko-hachinohe.com/

 

◆北里しっぽの会愛好会 松岡香歩さん・菅原惟央さん(共に北里大生)

十和田市にある北里大学獣医学部のメンバーからなる愛好会です。

月に1度の譲渡会を開催し、現在しっぽの会では猫6匹、犬2匹を預かっており、外部のフォスターさんもいらっしゃるそうです。

外部のフォスターとは、北里しっぽの会の部員ではない一般の方が動物を預かり、新しい飼い主を募集している形で、譲渡に関しては外部フォスターさんに一任しており、北里しっぽの会ではホームページや譲渡会での紹介のみの形をとっているそうです。

学生個人の部屋で預かっているので、大事に育てることができSNSによる里親募集のアピール等がしやすいというメリットがあるが、人数と場所が限られるため、たくさん預かることは難しく、経費不足に悩まされるというデメリットもあるとのことでした。

学生の負担だけでは厳しいので、是非寄付金のご支援を頂けないかとのお話でした。

http://animallover.web.fc2.com/

 

◆参加者全員で質疑応答&ディスカッション

各団体の現状のお話が終わった後、みなさん合同でのディスカッション、頂いた質問への質疑応答の時間となりました。

ボランティアさんの自己費用の負担範囲や、県外譲渡の有無など各団体の方に答えて頂きました。

寄付金は少額であっても嬉しいという話や、保護活動の中で、動物が急に具合が悪くなるなど、困った時のサポート体制について、各団体の中で準備が整っていることなど、ざっくばらんに伺うことができました。

今回は、行政の方もいらっしゃったので、不妊去勢手術の費用や、手術を行う病院側へも助成金がつくようになるといいという希望を直接伝える場面もありました。

上野さんからは、行政に頼る前に、自己負担も含めて飼い主としての責任のあり方をきちんと考えることも忘れてはいけないという指摘もありました。

近年増えてきている一人暮らし(高齢者も含めて)の方による多頭飼育崩壊について、みなさんのご意見を伺いたいと質問がありました。

動物愛護の会八戸のお二人から、多頭飼育崩壊の現場から動物を救出することも大切だけれど、飼い主にとっては生きがいを奪い、取り上げることになるので、そのケアも必要ではないかとありました。八戸の方は、ある飼い主さんの時、保護した犬に似たぬいぐるみを作り、首輪にその子の名前を縫い取って渡したことがあるそうです。

しっぽの願い@青森の小池さんも、どうすればよいかは分からないが、多頭飼育崩壊する前に介入し解決する術があればいいのですが…と仰っていました。

また、動物愛護の会八戸の島さんからは、不妊去勢手術に対し協力的な医師が増えることが理想とし、獣医1人ずつが、毎月1度でもいいからボランティアで手術を行うなど意識が変わっていけばいいという話があり、未来の獣医師として切に願う気持ちが伝わってきました。

 

最後にアイペットの上野さんから、青森動物愛護センターのサイト上で「ペットの防災」というページのご案内がありました。
https://www.ipetclub.jp/fun/aomori-bousai/

東日本大震災をきっかけに、ペットと一緒に避難するにはどうしたらよいのか、ということが問題となっています。
その中でペットと一緒に同伴非難(同室とは限らないが同じ施設内で避難ができること)ができるかどうか、の災害MAPを作ろうというページがあるので、是非青森県の皆さんで構築していって欲しいとのお話がありました。

 

◆閉会のご挨拶 青森動物愛護センター所長 渋谷憲司さん

最後に渋谷さんよりご挨拶がありました。

青森県も変わっていきたいという希望を述べながら、以前は獣医師会の働きかけにより助成金を確保していたが、今は予算がないため厳しい状況にあるとのことでした。

また、アンニイさんがおっしゃる通り、アニマルウェルフェアを意識した上での殺処分ゼロを目指して、ボランティアの皆さんと共に、幸福な猫を育てていけたらと結ばれました。

 

「フォスターアカデミーライブ配信 ~青森の猫を救うために、できることからはじめてみませんか~」レポート:八巻 千鶴子