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Volunteer’s Report 019 フォスターアカデミー セミナー第38回に参加してきました

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photo by 半沢 健

「フォスターアカデミー セミナー第38回に参加してきました」

 八巻 千鶴子

 
去る11月30日、四谷のTKPスター貸会議室にて、フォスターアカデミー セミナー第38回が開催されました。今回は、「猫ボランティアによる猫ボランティア講座」。
講師には、東京都動物愛護推進員・愛玩動物飼養管理士1級の島 千草さんをお招き致しました。
これから保護活動にトライしてみたい人達に向けて、専門家でもプロでもない目線から、現場レポート的な気軽さで、ボランティアの活動のことをお伝えできればいいと、島さんは話し始めました。

前半は、飼い主のいない猫の問題についてのお話でした。
島さんは、「飼い主のいない猫たち」を今回のテーマに選び、日本の住環境の変化によって、猫が外で生き抜くのに困難な社会となってきただけではなく、外の猫が媒体となって人へ感染する病気もあるため、飼い主のいない猫の増加は、見逃せない問題のひとつになっていることを指摘されました。
飼い主のいない猫が、驚異的な繁殖力で増え続けた結果、そのすべてを捕獲し、殺処分や譲渡対応をすることは難しく、まずは緩やかに減らしていくために、TNR(Trap Neuter Return:捕獲 不妊手術 元の場所へ返す)や、行政・住民・ボランティアと三者協同で行う地域猫活動へと発展していった過程を、分かりやすく説明して下さいました。

後半は、実際の活動についてのお話でした。
飼い主のいない猫に出会ってすぐにTNRをするのではなく、まず周辺地域のリサーチし、関係者の協力を得て計画的に実行することが大切で、ボランティアが猫を減らすだけの便利屋と化してしまわぬよう、地域住民の意識改革のきっかけとなることが大切だと、島さんは言いました。
また、フォスターと呼ばれる動物の一時預かりをされる方もいらっしゃれば、譲渡の際に尽力をされる方など、ボランティア活動には色々な形があることを説明されました。
猫ボランティア活動をされる方々の、一歩進んだ動物愛護の意識や、アニマル・ウェルフェアに対する考え方が、いつしか社会通念化し、人と動物とが共生する社会の実現の一助となればいい、と島さんは締めくくられました。
 
◆フォスターアカデミー ベーシックプログラム修了生 八木尚子さんのお話

続いて、フォスターアカデミー ベーシックプログラム修了生の八木尚子さんから、ボランティア活動のお話を聞くことができました。
八木さんは、テレビで犬猫殺処分の特集を見て衝撃を受け、何か自分にできることを探しているうちに、フォスターアカデミーの存在を知り、 ベーシックプログラムの受講を決めたとのことでした。
受講後は個人ボランティアのTNRのお手伝いをはじめ、猫の保護や譲渡、捕獲のHow toセミナー講師も行うに至り、二匹の保護猫と暮らすようになったそうです。
また、雑貨や珈琲の販売売上が保護活動費となる、ラブコ(Love & Co. http://love-and-co.net/)にて、気に入った猫雑貨を購入することで、手軽に経済的支援する方法もあると紹介して下さいました。
経済的にも時間的にも無理することなく、「自分のできる範囲」、そして「自分のやりたいこと」で、少しずつボランティアをしていくことを大切にしている、とお話して下さいました。
 
 
「フォスターアカデミー セミナー第38回に参加したあとで…」

 八巻 千鶴子

講師、島千草さんの話を聞いて感じたことをお伝えします。
島さんは、不思議と耳に残る印象的な声をしていた。
その声で、猫ボランティアについて一生懸命に語る島さんは、初対面なのに頼もしさを感じさせる人だった。
「保護活動をする方を増やしたい!」
島さんの内に秘めた情熱を感じながら、私は猫ボランティア活動の話に耳を傾けた。
島さんは、猫ボランティアの在り方や、飼い主のいない猫の問題、TNR(Trap Neuter Return:捕獲 不妊去勢手術 元の場所へ返す)の方法やフォスター(動物の一時預かり)など、主だった活動内容をあげていく。
そして、自身の経験から得た「乳飲み子を拾ったら、まず周囲に母猫と兄弟猫を探せ!」というような、ボランティアとしてもう一歩踏み込んだ行動や、「成猫は保護したら、『元の場所から誘拐されたてきた』としか思っていない」など、人と猫との気持ちに温度差があることを教えてくれた。
猫ボランティアの話の中で、島さんは「出会い」という言葉を使っていた。
「救うべき命(猫)を見つけた」ではなく、「救うべき命に出会った」と表現していた。
その表現が、猫ボランティアの中では使い慣れた言葉なのかもしれないが、私には「生きたいと願う猫」と、「助けたいと思う人」とが出会えた……という風に聞こえた。
いい言葉だと思った。
けれど、島さんの話はそれだけでは終わらなかった。
「出会った猫に関しては、自分で判断して堂々と決めて下さい」
島さんは、きっぱりと言い切った。
「できないと思ったら、見送って下さい。出会いの肩代わりをするのはやめて下さい」
出会った猫、つまり見つけた猫に対して保護するかどうするかは、自分で決めていいのだと説いた。
全ての猫を助けたい。
けれど、全ての猫を助けることはできない。
自分が見つけて保護した猫だけでなく、誰かから相談されるたびに、代わりに保護をしていたら、どんなに猫が好きでも自分の体も心も疲弊していってしまう。
だからこそ、今回はできないと思ったら見送っていいんだよと、島さんは繰り返した。
これから、何かボランティア活動をしたいと考えている人に対して、完璧を目指さなくていい、自分で「できること」をやってみればいいのだと教えてくれている気がした。
島さんでも、自分で決めたボランティア活動の結果に、いまだに後悔することもあるという。
それでも猫が好きだから、前を向いて進んで行こうとする島さんの強いまなざしに、何かできることから始めてみようよと、手を差しのべられたような気がした。