Volunteer’s Report 010 フォスターアカデミーセミナー第24回に参加しました
去る3月10日。
ヤマザキ学園大学にて、フォスターアカデミー セミナー第24回に参加しました。
一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルの松原賢さんによるフォスターアカデミーの解説、そして八木尚子さんによるフォスター体験談を聞くことができました。
今回のテーマは「動物画家がつなぐ思い~自然保全と動物保護~」ということで、動物画家・アトリエマンセルの岡田宗徳さんをお迎えしての講義となりました。
「フォスターアカデミー セミナー第24回に参加してきました」
「私は体育会系美術部ですから」
そう話す岡田さんは、ホームページに掲載されている写真と違って、実物の岡田さんは好奇心旺盛で人懐こそうな目をしていた。
元気いっぱいに見えるその姿から想像できない一言が、彼の口からこぼれ出た。
「自分は世の中の役に立てているのだろうか?」
仕事をしていれば、誰もが一度は持つ疑問である。
数年先に描く動物まで仕事が決まっているというのに、岡田さんはそう悩んだ時期があったそうだ。
動物病院のリーフレット用にヤンバルクイナを描くために沖縄を訪れていた時、仕事で出会った獣医師に、「先生は動物の命を救う事ができていいですね」と言うと、「絵が描けるんだったら、絵を描いて手伝ってよ」と返し、絵を描ける人は絵を描くことで動物や自然の保護に関わってくれれば嬉しいと、さらりと答えてくれたそうだ。
自分が悩んでいることの回答がすんなりと転がり込んできて、こういう人達の手伝いがしたいと思ったのが、岡田さんが野生動物や自然保護の活動に入ったきっかけとなった。
その話を聞いた時、なんとシンプルなことなのだろうと思った。
――難しく考えなくていいから、自分のできることからでいいよ
岡田さんの話なのに、思わず自分までそう言われた気がして、私は思わず目を見張った。
悩んでいると、自分ができることが見えなくなることがある。
この出会いは岡田さんにとって、「自分ができること」を再認識できた出来事だったのかもしれない。
絵を描く時、岡田さんは必ず現地のフィールドへ入り沢山取材を行う。
ヤンバルクイナを追い求めながら、何を考えたのだろうかと私は想像した。
行き詰ったときに圧倒的な自然を見て、自分がその大きな世界の中の一つに過ぎないと知った時、
たった一人で生きて苦しんでいるのではなく、人間も動物も大きな世界の中で生かされていると感じたのではないだろうか。
自分の中の苦しみを見つめるだけではなく、もっと外に目を向け、周囲に住まう動物たちのようにその日をただ懸命に、ありのままに生きる姿が美しいと感じたのではないだろうか。
大げさかもしれないが、生きる意味を問うよりも、その日生きていられることの喜びを感じる方が大切なのだと教えられた気がした。
現在の野生動物の状態、そのおかれている自然環境を「知る」ことで、岡田さんは絵を描き、知らない人へと現状を伝えていく。
そんな役目を引き継いだのかもしれない。
私達の身近にいる犬や猫だけではなく、世界にはもっとたくさんの動物が存在して、それを育む自然が今ほころびを見せ始めている。
そのほころびを繕うべく、絵を描くことや他の活動家の方々を支援していくことで、いつか動物たちが普通に自然の中で暮らしていけるように、これからも挑戦は続いていくと岡田さんは明言していた。
「耳を澄まして頂けますでしょうか」
そう言って岡田さんがパソコンを操作すると、録音された夜の西表島の音が会場へと流れ出す。
空も森も分け目のない、真っ暗な夜。
ただ一斉に生き物の気配だけが押し寄せてくる。
人間もそんな生き物のひとつだと分かった瞬間が、そこにあるような気がした。
まだ見ぬ夜をまぶたの裏で思い浮かべながら、私はほんの一瞬、西表島を訪れたような気持ちになった。
八巻 千鶴子
次回のフォスターアカデミー セミナーについては、下記ページをご覧ください。
http://www.fosternet.org/