クリステルアンサンブルが支援しているボルネオ保全トラスト・ジャパンhttp://www.bctj.jp
では毎年夏と冬にスタディツアーを行っています。
年末のスタディツアー参加者が撮影した川岸で日向ぼっこをする巨大なイリエワニの写真を送ってくださいました。
ワニもまた、生態系の頂点に君臨する動物です。
ところがこの写真を見たとき、BCTJスタッフは違和感を感じました。
「この時期にしては岸が見え過ぎている」というのです。
例年ならこの時期は雨季で川の水位が上がり、ワニが寝そべるようなスペースはないはず。
何か原因があるはずだ、と写真を見たスタッフは思いました。
原因は『エルニーニョ現象』。今年の3月くらいまで影響を及ぼすと最近発表された(http://borneobulletin.com.bn/el-nino-weather-to-continue-until-march/)
エルニーニョ現象のせいで、ボルネオは雨季にもかかわらず雨が極端に少ない日が続いているのだそうです。
エルニーニョ現象とは太平洋の東側、南米ペルー沖の海水温が高くなる現象。
これによって赤道付近を東から西に吹く貿易風が弱まり、太平洋の暖かい海水が西側(東南アジア側)に運ばれなくなってしまいます。
暖かい海水は上昇気流を作り積乱雲をつくるため、その付近は雨が降りやすくなります。
ボルネオに大量の雨を降らせているのもこの雲です。暖かい海水が東南アジア側に移動しないと雨雲が南米よりの地域で発生し、東南アジアでは雨が少なくなるのです。
また、エルニーニョが発生すると地球規模で大気の流れが変わるため各地の気候も大きく変化します。
寒い地域が暖かくなったり、雨の少ない地域に集中豪雨が降ったりと異常気象が起こります。
昨年、インドネシアと周辺諸国に大きな被害をもたらした煙害(ヘイズ)も、
異常な干ばつが続いたボルネオ島やスマトラ島での森林火災が想定以上に広がったことで起きたものでした。
地球温暖化とエルニーニョ現象の関係性は研究者の間でも意見は分かれていますし、
まだまだわかっていないことが多いです。
しかし温暖化によって大気中の水蒸気量が増えれば、エルニーニョ現象による異常気象も
より大きな規模で起こることは予想できます。
温暖化が進行しエルニーニョのような異常気象が起きやすくなると、
環境変化によって生物の生息地は急速に失われるでしょう。それに伴って多様性も減少します。
多様性が減少すれば、生態系システムも一緒に壊れていきます。
自然の恵みを受けて生きている私たち人間にとっても、そこはとても生きにくい世界になることは間違いありません。