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Project Red~ボルネオに住むゾウ~

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photo by 半沢 健

 
◆ゾウの住む川
財団ではProject Redのひとつとしてボルネオの生物多様性保全活動を支援していますが、そのボルネオにゾウがいることはあまり知られていません。
 
ボルネオ島北東部、マレーシア領サバ州の熱帯雨林を全長560kmに及ぶ長い川が流れています。
川の名前はキナバタンガン川。舌を噛みそうな名前を持つこの川の流域に、世界一小さなゾウ、ボルネオゾウが暮らしています。
 
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1000~1500頭が生息していると言われますが、はっきりしたことはわかりません。
絶滅危惧種に指定されており、その数は減っているかもしれません。
アブラヤシのプランテーション開発によって熱帯雨林が減り、生息環境が急激に狭められているからです。
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1990年代以降急激に進んだ土地開発は、膨大な面積の熱帯雨林をすべてプランテーションに変えてしまいました。
いまは、保護区指定されたわずかな森が残るだけです。
ボルネオゾウはこの森を川に沿って移動し、生活しているのです。
 
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◆人間と出会ったゾウ
キナバタンガン川流域には、先住民が住んでいます。
しかし昔はボルネオゾウの姿を見ることはほとんどなかったそうです。
ゾウは川から離れた森の奥深くを移動していたので、人目に触れる機会はありませんでした。
 
しかし今は、状況が全く違います。
川から離れた土地は全てプランテーションになってしまい、ゾウたちは川沿いに残ったわずかな森で暮らしているため、周辺に住む村人やプランテーションで働く農民と衝突する機会が急激に増えました。日本でもシカやクマと人間が遭遇することが増えていますが、ボルネオでも人間とゾウの生活圏が近づきすぎたためにこのようなことが起こっているのです。
 
プランテーションに踏み込んでしまったゾウの群れは若いアブラヤシの幹や葉を大量に食べてしまいます。
村のそばを通れば、村人が育てる野菜や果物を食べます。大きなゾウは住民にとっては恐怖の対象ですし、アブラヤシや畑を荒らすゾウは、現地の人々にとっては「害獣」なのです。ゾウに悪気はありませんが、アブラヤシを大量に食べられてしまった農民は大きな損害を被ります。
 
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野生のゾウは気性が荒いことも多く、簡単には追い払えません。そのため現地では村に入り込んだゾウを銃で撃ったり、プランテーションに近づいた群れを毒殺したり、と悲しい事件が相次ぎました。
ゾウを殺すことはもちろん違法ですが、他に有効な手段を持たない現地の人々は最も簡単にゾウを排除できる方法を選ぶのです。
 
◆保護されるゾウが増えている
こういった事態を防ぐために、州政府は野生動物保護チームを組織しています。ゾウに遭遇した住民がチームの出動を要請し、連絡を受けたチームはオリを積んだトラックで現場に駆けつけてゾウを捕獲し、別の場所に移動させます。
 
最近は、保護されるゾウの数が増えてきているそうです。また、原因はわかっていないのですが、1歳に満たない子ゾウの保護も増加しています。子ゾウには大量のミルクを用意しなければなりませんし、保護したゾウもすぐに森に返せるわけではなく、しばらく飼育して健康状況やケガの具合をみなければいけない場合もあります。
そのため、増加する一方のゾウの餌代が当局の財政を圧迫します。また、ゾウを飼育するための知識をもった人材も不足しているのが現状です。
 
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◆ボルネオ保全トラスト・ジャパンによる現地支援
財団が協力しているNPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパンは、この状況を打破するための活動を続けています。
理事を務める旭山動物園の坂東園長をリーダーとしたチームが、現地スタッフとともにボルネオゾウの保護・治療施設の建設や人材育成のプロジェクトを進めています。課題は山積み。しかし行動しなければ、前進はありません。
 
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伊勢丹オンラインストアで発売されたチャリティ・ジュエリーの支援金もボルネオゾウの餌代、特に子ゾウのミルク代に活用させて頂く予定です。ご協力よろしくお願い致します。
 
 
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