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photo by 半沢 健

1212日に地球温暖化問題における新たな対策・枠組みが第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で『パリ協定』として採択されました。これは1997年の京都議定書以降、実に18年ぶりの「世界が取り組む地球温暖化対策」になります。
 
温室効果ガス排出の問題は、世界がひとつにならなくては食い止めることはできないところまできていました。
 
1997年の京都議定書は「先進国のみが排出削減の義務を負う」ものでしたが、当時世界1位の温室効果ガス排出国だったアメリカが4年後に離脱。さらにその後、中国を中心とする削減義務のなかった途上国が急激な経済発展を遂げ、途上国の温室効果ガス排出は大幅に増加してしまったのです。
 
2009年にコペンハーゲンで行われたCOP15は合意に至らず、パリに期待が寄せられていました。今回初めて、先進国と途上国を含む参加196カ国が温室効果ガスの削減を約束するという世界がひとつになっての取り組みが実現することになったのです。
 
「気温上昇を産業革命と比べて2度未満にできれば、気候変動の影響は抑えられる」と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が報告しているなか、パリ協定では気温上昇を2度より十分に低く、1.5度に抑える努力し、さらに21世紀後半までに世界全体の排出量を実質ゼロにするという意欲的な削減目標が定められました。
 
これは生物多様性保全にとっても非常に喜ばしい決定です。言うまでもないことですが、地球温暖化と生物多様性保全は密接な関係にあるためです。
 
氷が溶けて行き場のないホッキョクグマのイメージが地球温暖化の象徴のように使われますが、寒い国の動物たちだけがダメージを受けるわけではありません。
 
世界の平均気温が2.7度以上上がれば、世界中の環境が変化します。気温が上がれば海水温も上がります。気候の変動が激しくなり、日照時間や雨の量や風向きが変わってきます。気候に変化が起きれば、成長に日光や雨を必要とする植物や菌の成長や繁殖に影響が出ます。そういった変化が、今度は植物を生活の糧とする昆虫や草食動物の生活に悪影響を及ぼします。
 
そうなれば、いずれ生態系を織りなす全ての生物、頂点に君臨するアンブレラ種から末端の分解者に至るまで、多様な生物がさまざま規模の損害を被ることでしょう。
 
変化に対応しきれない生物は滅び、ピラミッドを形成していた生物多様性も不可逆的(戻ることのできない)な、はかり知れないダメージを受けるのです。
 
大げさな言い方ですが、今回のパリ協定は人間と全ての生き物の未来に希望を灯したといえるものになるかもしれません。ただ大事なのは、この協定が守られること。各国が目標を達成するように注視していく必要があります。次の世代の未来に直接かかわる重要なことですから、しっかりと見守っていきたいと思います。