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ボルネオ通信 第四弾「パーム油と私たちの生活」

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photo by 半沢 健

ボルネオ保全トラスト・ジャパンの青木事務局長よりパーム油について解説いただく『ボルネオ通信』。シリーズ第四弾の配信です。
ボルネオではアブラヤシ畑の開発の為に熱帯雨林が伐採され、動物たちが住処を失っています。アブラヤシの果房から作られるパーム油。馴染みがないと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、パーム油と私達の生活がどのように結びついているかをご説明いただきます。
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パーム油は姿が見えない?
これまでの記事で、プランテーションから収穫されたアブラヤシの果房からパーム油が作られるまでの過程を見てきました。ここからパーム油は商品となって流通経路に乗り、小売店にならびます。
日本には年間約70万トンのパーム油が輸入されていて、単純計算では国民1人あたり年間5kgのパーム油を消費します。統計上は菜種油についで2位の消費量。意外に思われるかもしれませんが、パーム油は私たちの生活にとてもなじみの深い油なのです。
日本でのパーム油使用量(出典:パーム油白書2018)

日本でのパーム油使用量(出典:パーム油白書2018)

 
でも普段の生活でパーム油を見かけることってありませんよね。スーパーやコンビニで、サラダ油の隣にパーム油が並んでいるのを見たことがある人もいないと思います。年間の使用量ではずっと少ないはずのオリーブ油やゴマ油のほうがずっと身近な存在です。
 
これはいったいどういうことでしょうか。
 
パーム油が「見えない油」と呼ばれる理由がここにあります。パーム油はそのまま使われる以上に、材料や成分に姿を変えさまざまな加工食品、食器や洗濯用の洗剤、化粧品などに含まれているのです。
マーガリンショートニングの原料や、ポテトチップスなどスナック菓子の揚げ油として。チョコレートアイスクリームクッキービスケットパン粉ミルクの原材料としても大活躍です。
冷凍食品のお惣菜。パリパリ感、サクサク感を生んでいるのもパーム油の特徴が生かされています。変わったところでは練りからし飲むヨーグルトの原料に入っている場合も。
洗剤化粧品になくてはならないのが界面活性剤。これはアブラヤシのタネから取れるパーム核油からつくられます。
 
 
 
パーム油と私たちの生活
とにかく、生活のあらゆるシーンに顔を出してくるパーム油。私たちの生活にパーム油がどれほど密着しているのかを、普通の1日をなぞって考えてみようと思います。
朝起きて歯を磨き、顔を洗う。歯磨き粉石けんにパーム油が使われています。朝ドラ「まんぷく」を毎日見ていますが、いまや国民食とも言えるインスタント麺は、製造過程で麺を揚げる工程が欠かせません。その揚げ油としてパーム油が使われます。
外出前の化粧に使うファンデーション口紅ヘアムースなども成分にパーム油やパーム核油を含んでいます。
お昼はコンビニの弁当を買いました。惣菜の揚げ物はパーム油で揚げられているでしょう。午後のおやつにポテトチップスを食べましたが、コンビニで見かけるスナックお菓子はほとんどは材料を「揚げて」作ります。ということはここにもパーム油が使われます。
午後の外出時にカフェに寄りました。コーヒーにコーヒーフレッシュを入れます。これもパーム油。コーヒーフレッシュは植物油と乳化剤を混ぜて作った生クリームの代用品で、私たちが想像するような「ミルク」ではありません。
帰宅後、たまっていた洗濯物を洗います。洗剤の主な成分はパーム油です。
お風呂で体を洗うシャンプーコンディショナーボディソープにもパーム油が使われます。風呂上がりの楽しみにとっておいたアイスクリームも、原料にパーム油が含まれています。
寝る前には乳液保湿クリームを肌に塗ります。ここにもパーム油が使われています。
 
いかがでしょう。
朝から晩まで間断なくパーム油のお世話になっているのが、今のわたしたちの生活です。なにも日本人だけが特別というわけではなく、同じような生活をしている世界中の人たちは同じようにパーム油のお世話になっているのです。
 
でも、
不思議なことにどの商品を見ても原材料名に「パーム油」の名がないのです。
ここに私たちがパーム油を見つけられない理由、「見えない油」と呼ばれる原因があります。実はパーム油の代わりに、植物油脂という表示がありました。

チョコレート菓子の食品表示


 
2015年4月に「食品衛生法」「日本農林規格(JAS)法」「健康増進法」の3つの食品表示に関する規定が統合され、食品の安全性や消費者が自分の意思で食品を選べることをねらいに「食品表示法」がつくられました。
この制度のもとでは加工品の原料として使われた植物油名を記す必要はなく、「植物油」「植物脂」「植物油脂」のいずれかで記載すればよいルールです。
農林水産省の『日本農林規格・品質表示基準』によると、植物油は種類は菜種、大豆、米、オリーブ、パームなどに加えてサラダ油のような調合油、風味をつけた香味油の18種。この中から1種類だけ、または複数を混ぜたどの油を使ったとしても「植物油脂」と記載をしておけばOK、というわけです。
企業にとっては便利なルールですね。
 
 
一方で消費者にとってはどうでしょう。
「この食品に使われている植物はなに?」ということを知りたいと思っても、わざわざ調べなければ知ることはできません。少し面倒ですね。
 
今日の買いものや、明日コンビニで買うものの食品表示をぜひチェックしてみてください。
そこに「植物油脂」という言葉があれば、あなたもパーム油のお世話になっている、ということなのです。「本当にパーム油?他の植物油じゃないの?」とさらに疑問を持たれた方は、ぜひそれぞれの企業のお客様相談室に問い合わせてみてください。パーム油が使われている場合も、別の油を使っている場合も、やましいことがなければ教えてくれるはずです。

粉ミルクの食品表示


 
長くなりましたので本日はここまで。次回は、パーム油が地球にもたらす環境被害について書いていきます。
→ボルネオ通信第一弾「パーム油とは?」
→ボルネオ通信第二弾「パーム油の特徴」
→ボルネオ通信第三弾「アブラヤシの果実がパーム油になるまで」
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