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ボルネオ保全トラスト・ジャパンの青木事務局長よりパーム油について解説いただく『ボルネオ通信』、第三弾を配信いたします!
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前回の投稿からあっという間に半年以上も空いてしまいました。これから巻き返したいと思います。
前回はアブラヤシプランテーションから果房が収穫されるところまでをお話ししました。今回はその続きです。
収穫されたアブラヤシの果実が向かうのは、果房からパーム油を作り出すための搾油工場です。パーム油の生産工程は複雑ですが、ざっくりといえば「収穫した果房を蒸してギュッと搾(しぼ)る」だけです。これだけで果房からパーム油を搾り取ることができてしまいます。
果房を工場に運搬する際に気をつけなければいけないのは、なんといっても時間です。アブラヤシの果肉にはリパーゼという酵素が含まれていて、収穫直後から少しずつ中に含まれるパーム油を分解し油の質を悪くしてしまうのです。そのため収穫された果房は大型トラックに積まれ、24~48時間のうちに搾油工場に運び込まれます。航空写真でプランテーションを見ると、効率よく果房を運べるように直線の道路が張り巡らされているのがお分かりでしょう。
それにしても、この広大なプランテーションがほんの50年前まではすべて熱帯雨林で、プランテーションが拡大した分だけ動物たちの生きる場所が失われたという事実を考えると、そのあまりの命の喪失ぶりに呆然としてしまいます。
数年前、現地のパーム油工場を視察したことがあります。工場で働く方に案内していただき、アブラヤシの果房がトラックで運び込まれてからパーム油になっていく過程をじっくりと観察しました。
工場によって多少の違いはあるとは思いますが、おそらくほとんどの搾油工場は同じような工程で生産を行なっていると思います。
まず運び込まれた果房を蒸気で蒸します。大きな果房を蒸すと果実が果房から取れやすくなり、また果実自体が柔らかくなるのでより油を絞りやすくなります。蒸す過程で酵素も分解されるので、油の分解を防ぐという大きな役割もあります。
次は、蒸されて柔らかくなった果房から果実をより分ける工程です。稲の脱穀と同じ要領で、機械にかけて果房から果実をたたき落とします。果実が取り除かれた果房はEmpty Fruits Bunch(EFB)と呼ばれる繊維状の房となり、これは再利用できる原料としてペレットに加工してバイオマス発電の燃料に利用する、といった活用が進んでいます。見学した工場では隣接された焼却場でそのまま燃やし、その熱を工場内で再利用していました。
その後、選り分けた果実を加熱してドロドロした状態にし、圧搾機にかけます。ここで絞って出てきた液体がパーム油になるわけですが、この段階ではまだ粗製油と呼ばれる精製前の質の悪い状態のパーム油です。非常に濃いオレンジ色で粘り気も強いため、このまま出荷することはありません。
粗製油の純度をあげるためには水を足して粘り気を下げた後に遠心分離機にかけ、ゴミを取り除く作業を行います。残った水分を取り除く工程を経て、パーム油の出来上がりです。
この先、さらに精製工場へと送られさまざまな工程を経て、もっと使いやすい植物油に変貌します。
パーム油はとても便利な植物油です。そのまま油として家庭での調理に利用されるほかにも、パーム油由来の様々な成分が私たちの生活の様々な場面で役立っています。次回からは、パーム油がどのように加工され、私たちの身の回りでどのように利用されているかを紹介していきます。
認定NPO法人 ボルネオ保全トラスト・ジャパン
青木 崇史
→ボルネオ通信第一弾「パーム油とは?」
→ボルネオ通信第二弾「パーム油の特徴」
→ボルネオ通信第四弾「パーム油と私たちの生活」
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