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ボルネオ通信 第二弾「パーム油の特徴」

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photo by 半沢 健

第一弾に引き続き、ボルネオ保全トラスト・ジャパンの青木事務局長から、パーム油について解説いただきます。
参考:ボルネオ通信第一弾
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前回は、私たちが毎日のようにパーム油を使った商品を食べていること、パーム油の生産国では広大な面積の熱帯雨林が伐採されていることについて書きました。今回からはパーム油がどのように生産され、どのような過程を経てお店に並ぶかまでを数回に分けて紹介します。
パーム油は植物から採れる油です。アブラヤシという植物の実(果房と呼びます)を収穫し、蒸して搾るとパーム油が採れます。アブラヤシは西アフリカ原産の植物ですが、19世紀中頃に観賞用としてアジアにも入ってきました。
20世紀に入るとアブラヤシから採れるパーム油の価値に人々が気づき、インドネシアのスマトラ島や半島側のマレーシアで大規模農園(プランテーション)による商業用の採油が始まります。森林伐採や天然ゴムプランテーションの跡地を利用したり、また熱帯雨林を切り開いたりと、アブラヤシプランテーションの開発は急速に進んで行きます。
プランテーションとは熱帯や亜熱帯地方で行われる農業のひとつで、広大な土地で同じ種類の農作物を栽培する生産方式です。ゴム、紅茶、サトウキビ、コーヒー、綿花、アブラヤシなどがプランテーションで生産されています。

アブラヤシプランテーションの様子


 
温暖多雨の気候でしか成長しないアブラヤシは、赤道直下、南北緯度10度あたりの範囲が栽培適地となります。そのため大規模なアブラヤシプランテーションを開発するためには、熱帯地方で人の住んでいない広く平らな土地、つまり「広大な熱帯雨林」が開発の対象となってしまうのです。
アブラヤシはまず種を苗床で1年以上育て、苗の高さが1mを超えるくらいになってから植え付けします。一般的には1ヘクタールあたり40本ほどのアブラヤシを植え、果房を収穫できるようになるのはそれから3年後です。

アブラヤシの果房




アブラヤシの果房には、うずらの卵サイズの濃いオレンジ色の実で房状がぎっしりとついています。ひと房には1000~2000個もの果実がなり、重さ40kgにもなる果房もあります。果実の部分から採れる油を「パーム油」、種の部分から採れる油を「パーム核油」と呼び、用途に応じて使い分けられます。

果実の中の白い部分が種(核)です


 
 
たまにパーム油のことを「ヤシ油」「椰子油」と混同して説明している文章を見かけますが、その説明は間違いです。ヤシ油はココヤシという別の種類のヤシから採れる油で、いわゆるココナッツオイルのこと。パーム油とヤシ油は特徴や成分が随分違いますが、パーム核油とヤシ油の成分は良く似ています。
アブラヤシの果房は常夏で安定した気候のもと生育し、年間を通じて1本のアブラヤシから20~30個ほどの果房が収穫されます。収穫は全て人力で、とても長い棒の先にカマをつけた道具でひとつずつ切り落として行きます。

果房を切り落とす道具


 
苗が育ち収穫ができるようになってからは植え替える必要もなく20年以上も収穫期間が続きますので、実に効率の良い農作物ということが言えるでしょう。
それでも苗を植えてから30年も経つと収穫量が落ち、また幹がとても高く成長するので果房の収穫にも苦労するようになります。こうなってくると幹を枯らして伐採し、新しい苗に植え替えます。
次回も続いて、アブラヤシの果房の収穫からパーム油の精製について説明いたします。
お楽しみに!
認定NPO法人 ボルネオ保全トラスト・ジャパン
青木 崇史
→ボルネオ通信第一弾「パーム油とは?」
→ボルネオ通信第三弾「アブラヤシの果実がパーム油になるまで」
→ボルネオ通信第四弾「パーム油と私たちの生活」
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