当財団は、設立時より、認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパンさんの活動に賛同し支援を続けてまいりました。
2023年5月より、新たな試みとして、ボルネオ保全トラスト・ジャパンさんと一緒に「新ボルネオ通信」をシリーズで発信してまいります。
このシリーズでは、ボルネオのこと、ボルネオが直面している問題、問題に対するボルネオ保全トラスト・ジャパンさんの活動、そして当財団が行っている支援などなど、幅広く発信予定です。
ボルネオの問題には、知らず知らず私たちも関わっています。
シリーズで発信を続けることによって、多くの方にまずはそのことを知っていただき、支援の輪が広がったら嬉しく思います。
これまでパーム油が生産者にとっても消費者にとっても“ありがたい”存在であることをご紹介しました。
しかし、需要が急激に増えたことなどによる、持続可能性を考慮しないアブラヤシ農園開発や、違法な“火入れ”による土地の整地などにより、パーム油は(第2回でご紹介した)熱帯雨林破壊やそこに住む野生動物たちへの悪影響の原因と言われています。加えて、農園で働く、子供や移民を含む労働者の労働環境の問題なども指摘されています。
こういった問題を知ると、「じゃあパーム油を使っている製品を買うのをやめよう」とか、「パーム油を使わなければ良い」、と思われる方もいるかも知れません。
しかし、パーム油を使用しないことで、むしろ問題が生じてしまう可能性があります。
思い出してください、パーム油は、他の植物油と比べ面積あたりの収量が多く育てやすいこと、そして生産量が多いため安価であるということを。
“植物油”が私たちの生活にとって欠かせない存在である中で、パーム油を使用しないとなると、大豆や菜種といった他の植物油の原料をいま以上に生産する必要があります。パーム油より生産効率が大幅に低い代替油の原料の生産には、もっと広い土地が必要となり、そしてもっと人手や費用等もかかってしまうのです。
では、どうすれば良いのでしょうか。
綺麗事だと言われるかもしれないですが、諸問題を考慮した“持続可能”なパーム油が生産されること、そしてそれを利用することが重要です。
この生産・利用において、重要な役割を担っているのが、パーム油の生産において生じているさまざまな問題の解決を目指すために作られた“認証”“です。
民間企業やWWF等のNGOが設立したRSPO、マレーシア政府が設立したMSPO、そして、インドネシア政府が設立したISPOが発行する“認証“をご存知ですか。
※SPOは「持続可能なパーム油(Sustainable Palm Oil)」を意味します。R、M、IはそれぞれRoundtable(円卓)、Malaysia(マレーシア)、Indonesia(インドネシア)の頭文字です。
マレーシア政府が立ち上げたMSPO、インドネシア政府が促進するISPOはどちらかというと農法・農園の管理方法の改善等に注力しており認証対象も国内の現地生産者(農家)や加工者です。一方、RSPOはパーム油を使った製品・加工品を取り扱う企業、流通業者や事業に投資する銀行、アブラヤシ農家等幅広い対象を認証対象としています。民間の非営利団体であり、企業の自主的な取り組みではあるものの全世界で5000以上の企業が参加しており、消費者の立場としてはより身近な存在です。
RSPOには2種類の認証制度が設けられています。
- P&C認証:農園や搾油工場を対象とし、RSPOが定めた原則と基準に則って持続可能な生産が行われていることを認証
- SCCS認証:P&C制度によって生産されたパーム油を使用する製品を取り扱うサプライチェーンが対象となり、RSPOが定める要求事項を満たしていることを認証
RSPOの認証を取得した企業は、認証パーム油を原料として利用した自身の製品に、RSPOロゴマークを使用することができます。
RSPOについて詳しくは以下を御覧ください。
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3520.html
RSPO認証には、中国やインドと言った主要パーム油輸入国の認証油輸入が少ないこと、世界のパーム油生産の4割を締める小規模農家の参加割合が少ないこと等、課題ももちろんあります。そして、年間7000万トン生産されるパーム油のうち、RSPO認証油の生産量は2割に満たないのも事実です。
しかし、RSPO認証は、私たち消費者にとって、持続可能な生産をしているパーム油を利用しているかどうかを図る重要なものさしの1つと言えます。
その他にも、各企業が自主的に、パーム油を含めた原材料に対する方針をHPなどで公開していたりもします。
ぜひ、企業のHPをご覧になってみたり、RSPO認証マークを探したり、してみてください。
次回は、私たちの大切なパートナー「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」について紹介いたします。