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フォスターアカデミー『希少猛禽類を救え!』を開催しました。

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photo by 半沢 健

2023年8月5日(土)当財団のアドバイザーとして日頃から様々な助言をいただいている猛禽類医学研究所の齊藤 慶輔先生を講師にお迎えし、三越伊勢丹グループ労働組合の皆様を対象にしたセミナーを開催。
当日は、齊藤先生は釧路からオンラインで、参加者の皆さんはハイブリッドで約30名が参加されました。

財団より、簡単に財団と猛禽類医学研究所の関わり等についてご紹介させていただいた後、齊藤先生から『希少猛禽類を救え!-絶滅の危機に瀕した猛禽類と共生するためにー』をテーマにたっぷりお話を伺いました。

齊藤先生からはシマフクロウ、オオワシ、オジロワシなどの個体数が先生の着任当時よりも増えているという嬉しいお話がありました。ただ一方で、先生のもとには絶えず傷ついた猛禽類たちが保護されています。彼らの傷病や死亡の原因には人間が関与していることが多く、彼らが自分から人間の生活に近寄ってくる面と、開発などにより彼らと私たち人間の住処が近くなってしまっているという面の両方の側面があり、その結果 事故等を誘発してしまっているという厳しい現実についても知ることができました。

猛禽類医学研究所は、環境省から委託を受けて、怪我をした猛禽類をはじめとした鳥類を保護し、治療、リハビリを経て野生復帰させる取り組みを続けています。ただ、野生に戻すことが難しい終生飼養個体も多いことも事実です。猛禽類医学研究所は傷ついた動物の治療を行うだけでは不十分であると考え、元栓を閉めるための予防「環境治療」にも注力しており、具体的な事例も多く紹介くださいました。中でも、猛禽類たちによるとまり木としての送・配電柱の利用が起こす感電事故を防ぐため、電力会社の協力のもと、バードチェッカーを開発・設置し、終生飼養個体の助けも借りながら何年もかけて改良を繰り返しているというお話は、とても印象的でした。電力会社は感電事故による生活者への影響(停電等)を防ぎたい、猛禽類医学研究所は猛禽類たちを守りたい、それぞれ立場や理由が異なえど、“感電事故をなくす”という利害が一致することによって、素晴らしい協力関係が築けた例ともいえる本件などは、教科書などにも取り上げられているそうです。

釧路にある猛禽類医学研究所は、北海道全域が活動範囲であり、怪我をした猛禽類を車で保護し研究所に連れ帰るだけで何時間もかかってしまうため、三越伊勢丹の皆様と当財団がともに寄贈した医療機器を搭載したドクターカーが大変活躍していることもお話くださり、当時企画に関わってくださった職員の方も喜んでくださいました。

幾つか質問にも答えてくださいました。
Q.私たちにできることは?
A.一人ひとりが野生動物の置かれた現状を理解し、周囲に伝えていくこと。例えば、SNSを通じて猛禽類医学研究所の投稿をシェア、リポストすることもその一つである。
Q.野生動物とどの様に付き合えば良いの?
A.常に考える必要はないかもしれないが、お隣さんくらいの距離感で、ふとした時に気遣いの気持ちを持つこと。

クリステル財団としても署名に取り組んでいた「鉛弾の使用禁止」については、2025年から全国で段階的に規制を始めるという方向性を環境省が示しています。国としても、2030年までに鉛中毒ゼロを目指していますが、今もなお、鉛中毒のリスクにさらされている猛禽類たちが存在しているため、齊藤先生は少しでも早い規制や対策を必要としているということを参加者の皆様に伝えました。

 

当日の会場の様子です。

シマフクロウのぬいぐるみやお写真、また猛禽類医学研究が開発されているバードチェッカー(鉄塔などに⿃類がとまり感電死しないようにするためのもの)などをお借りして展示させていただきました。

     

 

クリステル財団では、企業や団体との連携でフォスターアカデミーを始めとした様々な講座の企画、運営も行っております。ご興味を持ってくださった方は是非ともお問合せください。
info@christelfoundation.org