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日本動物福祉協会主催『シェルター・メディスン・セミナー』に参加しました

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photo by 半沢 健

2022年8月7日(日)日本獣医生命科学大学にて開催された『シェルター・メディスン・セミナー 〜より良い譲渡に向けて〜』に事務局スタッフが行って参りました。シェルター・メディスン・セミナーは全4回のシリーズで開催されており、今回は今年度の第1回です。実会場での開催は3年ぶりで、今回からライブ配信とのハイブリッドとなり、会場には25名、オンラインでは200名の方が参加されました。コロナ禍以前は同じ会場がほぼ満席になる程、全国各地から獣医師さんや行政職員の皆さんが参加されていましたが、今回はしっかりディスタンスが確保でき、検温や換気も徹底しておられたので、午前10時から午後5時までの長丁場でしたが安心して参加することが出来ました。
今回のブログでは基本となる『シェルターメディスン概論』の概要を紹介させていただきます。

『シェルターメディスン概論』講師:田中亜紀先生(日本獣医生命科学大学講師)

・シェルターにおいて最も大切なことは、元気な動物を元気なままに早く譲渡すること。ストレスや感染症などによりシェルター内で病気になる、問題行動が出てしまう、譲渡のチャンスが無い動物を、科学的なアプローチにより改善を目指すことがシェルターメディスンである。

・対象動物はシェルターの中の動物だけでなく、地域の余剰動物(シェルター予備軍)を含む動物全般であり、シェルター内の動物福祉を守ると同時に、人と地域の安全を守る公衆衛生まで含まれ、コミュニティーメディスンとも呼ばれる。

・動物福祉の評価は以下の3つ。
1)飼養環境や食事などのリソース
2)ワクチン接種、衛生管理などの管理方法
3)動物の所見(疾患/外傷)や行動など
1、2は管理基準や数値で測ることができ、その結果が3(アニマルベースメジャー)に現れ、その評価は獣医学そのものである。

・「5つの自由」に加えて、シェルターにおける動物福祉には6つ目として不必要な苦痛、予後不良、治癒困難な疾病管理および治療の一環として、また公衆衛生や安全確保の観点から「安楽死の自由」が保障されており、それは獣医師にしか提供できない動物福祉の最後の砦である。

・「殺処分ゼロ」のプレッシャーにより必要な安楽死を行わず、引き取りを拒否するようになった結果として、動物虐待や多頭飼育崩壊、劣悪ブリーダーなど、動物福祉が損なわれる現状が放置されてしまっている。「殺処分ゼロ」ではなく全ての動物に動物福祉100%を。

 

午後は、シェルターメディスンを導入したことで譲渡率を上げ、殺処分率を低減させた詳細なデータや、休館日なしで毎日譲渡会を実現された取り組みなどを詳しく紹介くださった遠山潤先生(新潟県動物愛護センター長)による『自治体からの報告』と、不適切に飼養された結果生じてしまった犬の異常行動を改善するための具体的な方法を様々な動画を用いて教えてくださった入交眞巳先生(東京農工大学特任講師)による『犬の行動学』、そしてパネルディスカッション(質疑応答)まで大変勉強になる充実した内容でした。

次回以降もハイブリッドでの開催を予定しておられるそうですので、興味のある方は公益社団法人日本動物福祉協会さんのホームページをご確認ください。 https://www.jaws.or.jp/

※ フォスターアカデミーでもシェルターメディスンについて教えてくださった田中亜紀先生への質疑応答編を当財団YouTubeにて公開中です(2022年9月28日まで)是非こちらもご覧ください。
https://youtu.be/fuGZ-f9gp54

※ 入交眞巳先生が関わっておられる情報サイト「わんにゃん暮らしのアドバイス」
https://wan-nyan-kurashi.com/

※ 遠山潤先生がセンター長を務める新潟県動物愛護センター
https://www.pref.niigata.lg.jp/site/da-top/